嵐を呼ぶ女

日本では、なんとか島まで行かないと見えないという皆既日食が、上海ではちょっと広いところへ行けば見えるというので、上海天文台のある佘山というところへ行って来ました。

朝8時半、くもり。地下鉄9号線の始発・宜山路駅で待ち合わせ。
友人2人とその弟夫婦と5人で、ちょっとドキドキしながら地下鉄に乗り込みます。日本からこのためにわざわざやって来た弟夫婦のためにも、向こうは晴れてるといいんだけど。

目的地の佘山は、宜山路駅から9駅目。
5人分のワクワクを乗せた9号線は、快調に進みます。と、重慶にいるという友人・母から「生の声」が!
重慶では快晴の下、始まっているらしい」
さらに、広東にいるという友人・友人からも写真つきの生メッセージが!
「広東は青空だよ〜!部分日食だけど、超キレイ〜!!」
高まる期待。車窓をつたう水滴・・・水滴?

地上に出ると、そこは暴風雨だった。
日頃の行いレベルではないその激しさに、言葉を失う私たち。市内にいたほうが、晴れてはいないけど、傘とかなしで、時間にも余裕があって、見れたのでは?頭に浮かんでくるそんな疑問を何とか消しつつ、佘山駅で下車します。
改札へ抜けると、入り口には呆然と雷雨を見守るたくさんの人。無残にも、用済みと判断された日食グラスの残骸も。その気持ちはわかります。

せめて広い場所へ移動しようと、歩道橋の下へ。
しばし感傷にひたる私たち。何事も経験なので、とりあえず写真など撮ってみることにしました。ポジティブこそ、楽しく生きるコツ。しかし、そこにいたおじさんの一言には、なかなかへこまされました。
「今日ここらへんは、朝っぱらからずっと雨だよ」

そんなことをしていると、辺りが暗くなってきました。日食がピークを迎えたようです!これぞ皆既日食!!ちなみに、雷もピーク。
この貴重な瞬間に、この人たちと、この場所で同じ体験をしている、真っ暗になっても街灯の明かりがあるので「雨の夜」みたいでしたが、それもほんの5分間のことなんだと思うと、やっぱりとても不思議な感じがしました。

で、あっという間に夜明け。なんとなく、徹夜明けのあの、けだるい爽快感がありました。
終わってしまった、明けてしまったという、後悔のような、達成感のような、あの感じ。

帰りの地下鉄では、誰もがハイでした。

次に上海で皆既日食が見られるのは、300年後らしいです。300年後・・・。気が遠くなるほど先のことだけど、こんなに強烈な日食体験が出来て、わりと幸せだなと思える、2009年の上海なのでした。